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東京地方裁判所 昭和53年(ワ)151号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

(二) 以上の認定事実によれば、本件敷地及び本件旧建物はもと高崎喜代治及び被告が所有していたところ、原告は増田源三への代位弁済及び昭和三五年一一月の金一〇〇万円の支払をもつて最終かつ確定的にその所有権を確保したものであるが、両物件の当時の時価は、原告の右出捐額を上廻るものであつたから<証拠判断略>、被告が、改築された本件建物についてある程度の財産形成上の寄与があつたと考えてもあながち理由のないことではない。

そして、前記(一)のとおり原告が中学を卒業してから、一人前になるまでには被告にもそれなりの貢献があり、これらの経済的貢献と原被告間の血族関係の存在及び同居扶助生活を通じての身分的なつながりが、本件建物部分の賃貸借の当初から、その賃料等を近隣のそれよりも特に低廉に取り決める主観的事情となつてきたものであることは明らかであり、本件調停において、賃貸期間を、被告生存中と合意したこともその現れとみることができる。

しかし、原告は、右のような特別な事情に基き、すでに昭和四二年三月以来、本件増額請求まで十年余にわたり、低廉な家賃で本件建物部分の賃貸を続けており、権利金、敷金、更新料も徴収していないこと、しかも昭和四七年と昭和五二年とでは、東京都区部の消費者物価指数中、家賃は78.1対120.0と1.536倍強に上昇し、同総合消費者物価指数は65.1対118.7(東京都統計年鑑参照)と1.825倍強に上昇し、それだけ原告の受ける賃料の実質的価値は低落していることを考慮すれば、本件賃貸借には前認定の限度で、特別な主観的事情が存在するけれども、なお昭和四七年五月二三日設定された従前賃料月額三万円は不相当に低廉であり、右主観的な事情を考慮したうえで相当額の限度まで増額されるべきものと言わなければならない。

(三) ところで、鑑定の結果によれば、昭和四七年五月当時の従前賃料年額三六万円のうち減価償却費、維持修理費、公租公課、火災保険料のいわゆる必要経費を除いた収益部分は金二六万七二七一円となるが、昭和五二年七月時点での右必要経費額は年額一八万〇三〇四円である。

そうすると、右従前賃料の収益部分に前示(二)の総合消費者物価指数比を乗じた額に昭和五二年七月時点での右必要経費額を加算したものの一二分の一(月額)は金五万五六三六円(鑑定の結果中の物価指数比を用いれば同金五万五六八一円)となるけれども、前記(二)の家賃指数比によつて同様に算定すれば、月額四万九二四六円(円未満切捨)となり、家賃増額請求である本件では、後者の試算値は十分考慮すべきものである。

以上の試算値及び前記(一)、(二)で認定した本件賃貸借当事者間の主観的事情を総合して判断すれば、本件建物部分の相当賃料額は昭和五二年七月一五日以降一ケ月金五万円と認めるのが相当である。

(山本和敏)

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